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おいしいお米と水の物語 石越醸造

宮城の日本酒好きの方なら、一度は飲んだことがある地酒・「澤乃泉」。このお酒を造っているのが、登米の「石越醸造」です。

「澤乃泉」の名前は、酒蔵から300メートルほど離れた「中澤」という地名と、山を掘って水が湧き出てできた「泉」に由来しているそう。

原料米の8割は地元で作られたお米で、仙台・石巻・登米を中心に、出荷の県内シェアは8割。地元で愛され続けているお酒です。

石越醸造の酒蔵の所在地は「石ノ森章太郎ふるさと記念館」のある石森の隣町・石越
工場内の「澤乃泉」の瓶を洗浄する機械。昔は一升瓶が各家庭にあったが、300ml瓶や四合瓶へと小瓶化している

大正9年、農家の有志4人が、自分たちが作った米を原料にして酒造りをはじめた石越醸造は、2020年でなんと100周年を迎えました。

写真提供:石越醸造株式会社

8代目代表で杜氏の佐藤宏さんは、石越のご出身。創業当初の有志の一人は、佐藤さんのお爺様です。

「昔、この辺りには深い井戸があり、おいしい水が流れていたので、馬車がきて水汲みしていました。この場所に酒蔵を設ける時、ボーリングして同じ水脈の水を掘り当て、パイプラインに流してその水を醸造に使ったのが、澤乃泉のはじまりとされています。」

 

酒蔵を支えた杜氏

写真提供:石越醸造株式会社

佐藤さんが若手の頃、酒造りをしていたのは、岩手県花巻市から来ていた南部杜氏。

「杜氏さんは厳しかったですね。仕事は教えない、見て覚えろという、職人気質。20代前半の下働きの頃は、米を研いだり、蒸した米を運んだり、麹を作ったり、何でもやりました。」

長年やっていくと、感覚的に塩梅がわかるものですか?そう尋ねると、「わかりますね」と即答する佐藤さん。

「経験だね。初心者の時は、悩んで悩んで失敗しないように作る。経験を積んで来ると、どうすればうまい酒ができるかわかってくる。

昔から1麹(こうじ)2酒母(もと)3づくり(もろみの管理)が言い伝えられてきました。一番多く使っているのは、蔵の華という品種の米ですが、理想とする造りたいお酒を思い描いて、様々な原料米や酵母をどのように選別するかを見極めていきます。」

 

100年、その先へ

2020年に100周年を迎えた石越醸造では、記念酒「千光華美 華吹雪」・「千光華美 美山錦」を発売。各2000本限定で、みごと完売するほどの人気ぶり。

コロナウィルス感染拡大直後の2020年3月からは、消毒液の不足に対応して、原料のお酒を高濃度アルコールにして、消毒液を作り、登米市と栗原市に3カ月間提供し続けたそう。今も、スピリッツ商品として販売されています。

さらに、2020年にはリキュールの免許を取得して新たな試みも。

ヨーロッパから仕入れたシェリー樽に貯蔵し、色と香りをつけた焼酎も出している

「石越醸造は、地域に支えられて育ってきた会社です。おいしいお米と水があるから、おいしいお酒できる。酒類業界も厳しい状況だからこそ、清酒を軸にしながらも幅をきかせ、バラエティに富んだ商品を造っていきたいです。」

企画広報室の宮内さん(左)と8代目代表の佐藤さん(右)

 

石越醸造

登米市石越町北郷字中沢108-1

電話 0228-34-2005

http://sawanoizumi.jp/index.html