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オリジナル・ロゴで情報発信~登米地方の手仕事③自産自消を楽しむTome暮らし~

Studio.K特派員から、素敵なTome暮らしの寄稿です。

シリーズ第三弾。

もはや連載ですね!


<イントロ>

「チームでそろえるスウェットのフルジップ・ジャケット用に、ワンポイントになるオリジナルのロゴ・マークを創作できませんか」

職場の後輩さんからの突然のオファーに「えっ!」と反応しつつ、基本的には「お願い事は断らない」のが自分らしい。

受ける前提での回答は、「どうしたの?」で始まる聞き取りから。後輩さん曰く、イメージは「オンでもオフでもOK」なジャケットで、ロゴは「ライトで、洒落ていて、業務もさらっとアピール」とのこと。

これまでも、登米懐古館のイメージ・ロゴをポロシャツなどにアレンジした実績があり、依頼は自然な流れか。

<創作の基本線>

内容は理解したものの、ゼロから始めるにはヒントがちょっと足りない。

しかも「洒落た…」の枕詞が何気にプレッシャー。

もっとも「頼られてうれしい」には勝てず、話を聞いたからには「ノー」と言えず、もう少しヒアリング。

創作ロゴの発案は「新1万円札がスタート→新1万円札には東京駅が図案化→東京駅の屋根には登米産の天然スレートも使用→登米市ってすごい」という流れに乗りたいから、「スレートがベースのロゴに」が起点とのこと。

創作の基本が「スレート(登米産玄昌石)をベース」であれば、話は早い。

<登米産天然スレート(玄昌石)のあらまし>

創作の前に、天然スレート(玄昌石)について、あらましをホンの少し。

宮城県内では、石巻市周辺から気仙沼市にかけて、さらには岩手県南地域に至る太平洋沿岸エリアにおいて、粘板岩の層が分布。

粘板岩の石種の一つで、深みのある黒が美しいとされるのが玄昌石。

登米地方では、明治時代から平成6年ごろまで生産されていたらしく、登米町を中心に多くの建物の屋根材として使われてきた。

かくいう私の家も、登米産ではないものの、スレート屋根が目印。

登米産天然スレートは、前述の東京駅をはじめ著名な建物の屋根材に使われ、登米市でも「市内産天然モノ」の収集・活用に努めていたことが。

これも「地産地消」の一環か。

市内産スレート屋根の家屋の建て替えなどにあたり、市が協力を呼びかけてスレート材を回収するなど、登米産の天然モノを次代に引き継ぐ取り組みが行われていた。

その成果が、令和元年9月に開館した「登米懐古館」の屋根に活用されたことは、私たちの記憶にも新しい。

登米産天然スレート約26,000枚で仕上げられたウロコ葺きの屋根は美しく、周囲の景観にもとけこむ落ち着きの佇まいを演出。

【登米懐古館の外観】

【ウロコ葺きの屋根~登米懐古館~】

なお、集められたスレート材の中には、劣化や一部破損により屋根材に利用できないものが。

そうした部材も廃棄することなく、登米懐古館へのアプローチに使われ、地場産品を独自のデザインで特徴づけている。

【スレートを活用した懐古館のアプローチ】

<創作へのイメージング>

「スレート感の効いたロゴ・マーク」創作にあたり、「登米産天然スレートってどんなもの?」とか「質感を反映したデザインとは?」などと、問われるかも。

実は、登米産天然スレートの加工作業を既に体験済みで、天然スレートの「国選定保存技術保持者」である佐々木信平さん主催の体験会に参加。

専用の道具を使っての加工手順を教えていただきながら、徐々に目指す形に仕上げていく作業を体験。

ちなみに、令和7年1月17日(金)にも、登米市内で加工体験会が計画されている。

加工体験会チラシ

自己満足レベルの体験作業とはいえ、予想していたほどハードルは高くない印象。

手に持ったスレートの質感&重量は「まさに石」で、少しずつ形を整える工程は面白さのほうが大きい。

このときの作品が写真の「ハート型」で、当時は周囲にプチ自慢したもの。

【スレートの加工体験から】

【私の創作~♡の想いが届く?~】

<ロゴ・マークの創作>

登米地方のスレート屋根は「うろこ葺き」が定番。

よって、基本形は「ウロコ∩の形と黒系か濃いグレー系の色」に。あとは「左胸にプリント」するサイズの検討。

【スレート屋根の定番】

【登米懐古館を紹介いただいた学芸員さん~ウロコ葺き~】

ただし、色を「黒系かグレー系」とした場合、ウロコ型∩の図形だけにしたのでは、「もしかして、フルジップ・ジャケットの胸ポケット?」などと勘違いされないよう、一緒に図案化できる気の利いたキャッチ・コピーの配置がセンスの見せどころ。

後輩さんからのキャッチ・コピー案は「I LOVE SLATE!」。

背景となるウロコ型∩にマッチする書体をいくつか試してみるものの、どうしても「I」が一本の細いタテ線に見えてしまうのがネック。

「I」を「We」に変えてみると、存在感のある「W」で始まるアルファベット2文字になり、ちょっと安定。

次に、キャッチ・コピーが1行では、背景のウロコ型∩マークが横長になるため、2行を選択。

改行して2行目を「SLATE!」だけにすることは、考えるまでもない。

すべて大文字ではアルファベットのインパクトが強くなるので、ぱっと見の印象を考えて「Slate!」と「S」だけ大文字に。

そうなると、1行目の「We LOVE」が少し重いイメージ。

自作のスレートの写真を見ていたら、「LOVE」を「♡」に変換することが浮かぶ。

考えればなんとかなるもので、オリジナル・ロゴの基本形が整うことに。

それでも、ウロコ型∩のマークを「黒のベタ塗り」にしたのでは、依頼の「洒落た…」には不足かも。

スレートの表面にキャッチ・コピーを印刷したような仕上がりはどうかと、「黒」をスレート表面のような風合いに調整し、新作ロゴ・マーク(以下の写真のとおり)が完成。

ただし、フルジップ・ジャケット本体の色を黒やネイビーなどの濃色系でチョイスした場合は…?

ロゴの別バージョンも必要と気づき、もう一工夫。

ここでも「洒落た」イメージは外せない。

ベースを「基本形の反転」にするのは当然で、背景色は「白」にするまでは考えるまでもない。

そうなると、文字は「黒」で、さらに、基本形に施した「スレートのイメージ」をどこに活用するかといえば、黒い「ハート♡」の一択。

そうして「パターン②」も以下のとおり完成。♡のスレート柄に気づくと、誰もが「こだわってるね~」と。

発注主であり職場の後輩さんに「パターン①」と「パターン②」のデザイン案を渡し、ミッション完了。

その場で製品になった状態を見たいとお願いされ、私のツテで佐沼の洋品店に試作品の製作を依頼。

一週間で2種類(本体が黒とライトグレー)を試作いただき、初回発注数はまずまずの20着。

早くも、ポロシャツやTシャツなどへの応用といった要望が。

いろんな場面で、さまざまな立場の皆さんに着用いただけたなら、とてもありがたい。