グルメ
山奥で幸せを祈願する お寺cafe夢想庵
三陸自動車道・桃生津山ICから車で約5分、静かな山間に大きな赤い鳥居が現れます。これから向かう場所の入り口を前に厳かな気持ちに。
「柳津虚空蔵尊」は、丑年・寅年の一生一代の守り本尊で、十三仏の最後三十三回忌の本尊。神様と仏様が境内に同居している珍しいお寺であると共に、檀家のいないお寺として、1,000年以上の歴史を築いてきました。
竹林を抜けた先に見えた、境内の一軒家の正体は……なんとカフェ。
ここが、境内にある「お寺cafe夢想庵」です。
古民家の店内には様々なテイストの家具が置かれ、レトロな照明の灯りに照らされています。
はじまりはコーヒーが飲める蕎麦屋
カフェがオープンしたのは、2012年12月31日。大晦日に開店するお店はなかなか無いのでは……?という疑問に答えてくれたのは、オーナーで住職の奥様でいらっしゃる、杉田史さん。
「はじめはここで年越しそばを出していました。カフェはずっとやりたいと思っていましたが、最初は長机を並べているだけの場所。“コーヒーが飲める蕎麦屋”なんて呼ばれて、カフェとは程遠い雰囲気のお店だったんです。」
そんな杉田さんの思い描くカフェのイメージは「日本家屋の応接室」。昭和40年代の日本家屋にあった応接室だけ洋風の作りのような、和洋折衷な雰囲気を出したかったそう。日本のものだけではなく、ヨーロッパの家具も少しずつ増やしていったといいます。
人とのご縁がお店を育てる
お店を見渡すと、ところどころにステンドグラスが。
「薪ストーブのある一角のステンドグラスは、石巻在住のステンドグラスの先生に制作していただきました。シンボルツリーのゆずり葉は、代々子に譲るという縁起の木。ステンドグラスをこのお店に入れてもらえたのも、人とのご縁だと思っています。」
元々は建物の玄関だった一角に、設置してもらったという薪ストーブ
2019年の台風19号の豪雨でカフェも浸水し、畳を全て一新。縁も可愛らしいアクセントになった上、店内の空気もすっきりしたそう
カフェの名物のひとつ「縁結びお抹茶」は、朱色のお盆に恋みくじが添えられていて、縁起が良さそう。
「お抹茶は『茶都丸山園』の宇治抹茶を、境内の黄金水で点てています。せっかくなら、地元の美味しいものを食べていってほしいから、かりんとうは登米の名産でもあるお麩を使った『仙台麩かりんとう』を出しています。」
さくさくとした軽い歯ざわりに、お抹茶の苦味がよく合います。
山奥の1本桜のようなお店へ
お話を伺っている最中も、お客さんやスタッフを気にかけて明るく振る舞う杉田さん。その気さくなお人柄にファンも多い様子。
「お店にいらしたお客様が、カフェのメニューを目の前にした時に、『わぁ〜可愛い〜』って言ってくれるのが何より嬉しいの。喜んでもらいたい、その一心で少しずつお店が出来てきたから、常連さんに『来る度に素敵になるね』と言われるとやっててよかったなと思える。カフェが私の人生を明るくしてくれたんです。」
「目指すのは、1本桜のようなお店。どんな山奥でも、きれいだったらその桜を見に行くでしょう?ここも山奥だけど来たくなるような魅力のある場所にしていきたいです。」
お寺にある従来のイメージを変え、敷居をさげてくれる「お寺cafe夢想庵」。お客様が帰る時、火打ち石で邪気払いをして送り出しながら、今日も杉田さんはお客様の幸せを願っていらっしゃいます。
お寺cafe夢想庵
住所 〒986-0401 宮城県登米市津山町柳津字大柳津63
https://www.kokuzouson.or.jp/cafe.html
電話 0225-68-2079
営業時間 10:00~16:00