くらし
0才から100歳まで楽しめる「絵本カフェ おひさまの国」
登米町から車で約20分。佐沼警察署を目指してくると、赤レンガの建物が見えてきます。小さな店構えですが、エントランスのガラス窓いっぱいに貼られた動物や草木の切り絵から、そのお店だとすぐにわかりました。
ガラスのドアを開けると、中にも内扉。可愛らしいねこや小鳥が、引き戸だよ、と教えてくれます。
壁、床、天井、全て木張りの店内はほんのり優しい木の香り。目に飛び込んでくるのは、壁の大きな本棚と数々の絵本。ところどころに、絵本の中のおなじみのキャラクターの人形やポストカードが並んでいます。
出迎えて下さったのは、「絵本カフェ おひさまの国」のオーナー、堀田菜菜江さん。
優しい笑顔と明るい声、まるで幼稚園の先生のような雰囲気。それもそのはず、子育て支援を行う「NPO法人すくすく保育研究所」の理事長として、日々こどもたちと親御さんに向き合っているからなのです。
こどもと親のための「居場所」をつくりたい
「これまで子育て支援事業を手掛けてきましたが、常時使える場所はなく、その都度市民センターなどの場所を借りてワークショップなどを行なっていたので、活動が常時できる拠点が欲しいと思っていました。そして、私自身3人のこどもを育てる中で、社会と切り離され孤立している感覚があった。それを解消できるような場づくりをしたいと思ったんです。」
そんな堀田さんの元に、神戸で雑貨やファッション通販を手がける株式会社フェリシモのプロジェクト助成、そして登米市の空き店舗事業のタイミングが重なり、トントン拍子でカフェオープンが現実のものとなりました。
「とはいえ、カフェをやったこともなかったですし、何をどうしたらいいのか分からず。でも、開業資金が振り込まれて、もうやるしかない(笑)そんな時、同級生が持っている物件でこの場所を紹介されたんです。」
カフェの隣は警察署。建物もカフェとは程遠い雰囲気だったそう。それでも堀田さんは直感を信じ、即決。内装は、震災支援を機に関東から登米へ移住してきたご夫婦の大工「ietoka」のお二人にお願いすることにしました。
安心・安全な木のお店
「『ietoka』さんは登米内外でとても人気の大工さん。他の案件も沢山抱えていらっしゃいましたが、話をすると是非やりたい、と快諾してくれました。ざっくりとしたイメージは伝えましたが、あとはお二人にお任せ。
彼らは、木をとても大事にされているんです。余り木も大切にとっておいて、それぞれの木の特性を生かしてパズルのようにはめ込んで作るんですね。」
店内を改めて見渡すと、材質がそれぞれ違っていて、それがまた暖かい雰囲気を作っていることがわかります。エントランスの内扉も「ietoka」のお二人のアイディアだそう。
名物パンケーキ誕生秘話
堀田さんと話をしている最中、店内中にお菓子が焼ける甘い良い香りが。キッチンのオーブンから取り出されたのは……
パンケーキ!みてください、このふっくらとした焼き上がり。
「冷めるとしぼんでいってしまうから、焼き上がりをすぐに召し上がれ!」
ナイフを入れると、さくっ、中はとろっとろ。口の中で優しい甘さがとろけます。
カフェをはじめるにあたって悩んだのがメニュー。看板メニューが欲しいと思っていた時、堀田さんは知人から東京の人気店「COMMA COFFEE」のカステラパンケーキを紹介されます。一口食べて、これだ!と思った堀田さんは、ダメ元でレシピを尋ねました。返事はOK。「絵本カフェ おひさまの国」でも、「COMMA COFFEE」のレシピのパンケーキで「おひさまパンケーキ」として提供できることになったのです。
みんなで集まり、情報を共有できる場へ
オープンから早3年。開店当初は、フリーランスのシェフや児童館に勤めていた方などに手伝ってもらいキッチンを回していたそうですが、今はレギュラーのスタッフが入り、お料理もお菓子も安定して提供できるようになったといいます。今後、カフェを通して堀田さんがやりたいこととはどんなことでしょうか。
「私の周りには、それぞれに得意分野を持っている人が沢山います。栄養士さんに離乳食について教えていただく機会を設けたり、絵本の読み聞かせをしたり。そうやって、何かをやりたいと思った女性のチャレンジの場になったり、またそういう場に参加することで、刺激や安らぎを感じたりしてくれたらとても嬉しいです。カフェには、子育て世代はもちろん、シニア世代の方も沢山いらっしゃる。“0才から100歳まで来られるカフェ”を目指したいですね。」
「前向きな菜菜江さんと話しているだけで元気になる。私も何かしなきゃと、毎回背中を押されます」キッチンスタッフのひとみさん。彼女もまた、子育てをしながらここで自分の得意分野を生かしている
カフェの奥は小上がり。赤ちゃん連れもゆったり過ごせる
「絵本カフェ おひさまの国」
住所 〒987-0511 宮城県登米市迫町佐沼字中江5-11-8 中江開発ビル1階
電話 0220-23-8766
メール welcome@ohisamanokuni.jp
営業時間 平日/11:00~14:00 土・日・祝日/11:00~15:00
定休日 不定休/お越しの際は「おひさまカレンダー」で営業日をご確認ください。