みどころ

登米の新しいランドマーク「登米懐古館」

宮城県北東部の登米町(とよままち)は、かつて仙台藩の一門として栄えた城下町。武家屋敷や蔵造りの商店が軒を連ねる通りは、江戸時代の面影を残していて、散策しながら当時の雰囲気を感じることが出来ます。

表通りから一本入り、武家屋敷通りから重厚な武家屋敷の門をくぐると、敷きつめられた芝生と石畳の道が現れます。奥の平屋の建物が、2019年9月に開館した「登米懐古館」です。

郷土に尽くした実業家

「登米懐古館」は、昭和36年、登米伊達氏の居城であった寺池城三の丸で開館しました。登米町の名誉町民である渡辺政人氏古希記念事業として、施設の寄贈と渡辺氏のコレクションから伊達家ゆかりの貴重な武具や美術品などが寄贈されたことによるものです。

氏は私財を投じて郷土に尽くし、登米懐古館のほか、財団法人渡辺奨学会を設立するなど郷土の文化教育事業に貢献しました。

建設から60年の月日が経った令和元年9月、渡辺氏の志を継ぎ、現在の地に新築移転しました。設計は、日本が誇る建築家の隈研吾氏。登米との縁が深く、平成8年に「森舞台」を手掛けて以来2作目となります。

地元産へのこだわり

建築を手がけた隈氏は、登米の自然と歴史を大切にし、地元の素材と技術を活かすことにこだわりました。建築は、優れた腕を持つ大工の集団と評されてきた東北の気仙大工の技からヒントを得ています。

建物の外壁には、登米で使われていた板倉をヒントに、羽目板を再現している
館内エントランス。天井の木製の梁(はり)がつくり出す陰影とやわらかい日差しが心地よい
土間ホールの土壁には登米の土が使われ、時間の経過とともに風合いが変化していくよう仕上げられている

「登米懐古館」の屋根と庭園の敷石に使われている石は、登米町産のスレート。もともと登米ではスレートが採石されていて、その強度と表面の美しさから東京駅舎の屋根にも使われています。現在はスレートが採石されておらず入手が困難でしたが、資材の一部を市内の住民から寄付を受けるなどの協力を得て、地域の歴史を後世に伝えたいという隈氏の想いが実現しました。スレートは屋根や庭園など、随所に使われています。

屋根も登米町で採れた天然スレート葺き。鱗のような重なりが特徴的

 

新しい日本庭園のかたち

「登米懐古館」の見どころは、建物だけではありません。庭園は周囲の建物に調和し、大変美しく設計されています。

庭園設計を手掛けたのは、イギリス王立植物園などを担当した、山口陽介氏。春ならヤマザクラ、シダレザクラ、初夏にはシモツケ、アジサイなど、四季折々の風情を感じることができます。

庭園のアプローチも特徴的で、小端立て(こばだて)と敷石とのパターンで構成されています。表面にリズムを生み出しています。スレートを縦に使うというこれまでにない斬新な発想は、スレートの新たな可能性を引き出しています。

隈氏が檜皮葺きの屋根の上に時の経過とともに苔が生え、緑になっていく様子にヒントを得て、スレートと緑化ルーフを組み合わせた屋根

 

伝統と文化を伝える交流空間 土間ホール

館内エントランスに入ると、大きな山車が目に飛び込んできます。毎年9月の第3日曜日の前日から行われる「とよま秋まつり」に各町内会で製作される山車で、現在飾られているのは2019年に風流大賞を受賞したもの。

「本来山車はお祭りを終えると解体されてしまうのですが、ここで訪れた方々に見ていただくことで、お祭りの時以外にも『とよま秋まつり』の雰囲気を感じていただけますし、山車を作った皆さんの伝統を守っていく心意気を少しでも応援できればと思っています。」そう話してくれたのは「登米懐古館」スタッフの阿部さん。建物の設計をする段階で、山車が入る高さの天井をオーダーしたそう。

「登米の歴史を継承する“まちに溶け込む歴史資料館”として気軽に立ち寄れる場所でありたいと思っています。これからいろいろなイベントを企画していきますので、是非足を運んでいただきたいです。」と阿部さん。

歴史だけではなく、現代に続く文化をも伝える登米の新しいランドマークへ、是非足を運んでみてください。

黒で統一された展示室。登米伊達家ゆかりの貴重な品々が常設されているほか、企画展も展開されている

登米懐古館

http://toyoma.co.jp/facilities-kaiko/

〒987-0702 宮城県登米市登米町寺池桜小路72番地6

開館時間: 9:00〜16:30