くらし
冬は杵つき餅でお正月~登米地方の手仕事②自産自消を楽しむTome暮らし~
Studio.K特派員から、素敵なTome暮らしの寄稿です。
師走に入ると、餅つきに向けた日程調整。
わが家では、年末に杵と臼で餅をつき、新年を迎えるのが、30年以上続けてきたルーティーン。
私としては、中学生のころから杵で餅をついているので、キャリア的には50年以上。
古来「9餅はつかない」と語り継がれている習慣を受け継ぎ、「12月29日」には餅をつかない。
年末ギリギリのとても忙しいタイミングではあるものの、餅つきは「12月30日」が守り続けてきたマイ・ファミリー・ルール。
6升分のもち米を手配し、29日までに杵と臼の状態を確認しつつきれいに洗う。
もち米は、29日にといで水につけておき、当日へと。
ここまでで、準備作業としては5割くらいの出来高。
小豆を炊いてあんこに、生姜をおろして醤油と合わせる、焼きのりを餅のサイズに切り分けておくなど、食べる準備のほか、新年から食べ始める「保存用」の餅を切り分けやすくするための箱・ビニールシート・片栗粉の手配もあり、スケジュールはとてもタイト。
奥さんと二人で分担しないと、なかなか予定どおりには進められない。
当日の朝は「暖か過ぎず寒過ぎず」が一番。
暖か過ぎると、汗が冷えて風邪をひいたりすることも。
逆に、寒すぎると、ふかしたもち米が冷めやすくなり、なめらかなつきあがりにならないことも。
もち米の量は、長いこと3升で2回の餅つき工程だったのが、このところは2升で3回に。
私と奥さんの体力的に3升では素早くつけなくなったためもあるが、息子に餅つき技を伝授しながらの作業工程にしたことが大きい。
1回あたりの所要時間を短くしつつ練習回数を確保するためもあって、2升で3回にしている。
餅つきは1人ではできない。
【息を合わせてついていく】
つき手のほかに「あい取り」と呼ばれる「水を加え、臼の中のもち米を寄せたりひっくり返したりする」人が必要で、つき手よりも「あい取り(登米地方では、えーどりと呼ばれる)」側のかじ取りのような部分が、つき上がりを左右するといっても過言ではない。
【あいどりのリードに任せて】
スタートに戻って、蒸した(登米地方では「ふかす」)もち米2升を臼にあけ、餅の下地を整える作業(登米地方では「つとねる」という)を行う。
【つとねる~これがつき上がりを左右~】
この過程で時間のかけ過ぎなどにより、冷めたり蒸気が抜けたりすると、米粒が残ったままになるなど、なめらかで口あたりのよい餅にならない。
まさに「時間勝負」で、このプロセスを順調に通過できれば、それからは「あい取り」のコントロールに任せるのみ。
杵を支えに腰を入れながら、つとねていき、米粒がほとんどつぶれてきたら、「あい取り」の水補給や寄せたりひっくり返したりに合わせ、杵を上げてはおろすの繰り返し。
息が合ってくると、より美味しくつき上がると信じているので、声を掛け合いながら作業を進めるのは当たり前。
見た目が「もち肌」になったら、ちょっとつまんで食感を確かめ、つき上がり。
1回目と2回目の餅は大晦日の夕食後に切り分け、祝い膳でのお供え&新年の食卓に。
3回目の餅は、30日の昼食に家族でいただき、残りは友人へのお裾分けと31日の食事で。
飾りつけや買物など新年を迎える準備優先で食事をとるため、餅の残りはありがたい。
言わずもがなというか、1年に一度しか餅をつかなくなって久しいため、つき手の私もあい取りの奥さんも、1回目よりは2回目、2回目よりは3回目と、コツを思い出しながら息も合ってくるというのがいつものことで、新年に向けた保存用の餅より、その日に食べてしまう3回目のほうが、美味しく仕上がることに。
お裾分けも理由にして、美味しいところを、ついたその日に「いただきます」。
なお、大晦日から新年にかけて、食卓を彩る茶わん蒸しも、わが家では鶏ガラからとるダシ・スープがベースに。
この鶏ガラは、そのまま捨てることなく再利用。
世間でいう「雑煮」のほか、わが家では「ふすべ餅」も定番。
これは、登米市の一部から栗原市の北部にかけて伝わるメニュー。ダシを取り終えた鶏ガラに残る肉片をそぎ落とし、すりおろしたゴボウとニンジンに混ぜて平鍋で加熱、醤油で味を調えて餅のつけ汁に。本来なら、年末に捕まえたドジョウを焼いてダシにするのが伝統のスタイルとはいえ、年末に身近なところで天然もののドジョウを確保するなど、昨今は容易にはできないこと。
そこで考えたのが鶏ガラの再利用。毎日、温め直すほどに味が練り上がるようで、年末年始の疲れた胃腸に優しい味わい。
だからといって、いつものことながら「食べ過ぎには注意」。
【あんこ餅―わが家の定番・粒あん】
【えび餅(沼えび)登米・栗原ならでは】