登米に暮らす
梅干しのススメ~登米地方の手仕事 自産自消を楽しむTome暮らし④~
Studio.K特派員から、旬なTome暮らしの寄稿です。
というか連載です。
シリーズ第四弾!
いつにも増しての厳冬も、立春から雨水を経過し、啓蟄ともなれば、三寒四温の言葉どおり、春の息吹を感じられる日々に。
こうした二十四節気の風情のある言い回しとは無関係に、体が示すアレルギー反応に一足早い春を実感する人のほうが多いかも…。
街角の風景に目を移せば、庭先や畑の一角に佇む早咲きの梅の可憐さが目をひく。
世に春といえば「パッと開いてパッと散る」美しさと儚さとを兼備する桜が至高とされる傾向なれど、紅梅でも白梅でも、桜花よりわずかに早く春の訪れを告げる梅花。
宅内にちょうど良い樹高や枝張りで、多くの花を見せてくれるところだけでなく、枝打ちをはじめ桜よりも日常の管理に手がかからないイメージなのも、身近で愛でられている一因か。
<梅花より梅の実>
私の実家の宅内、登米市石越町にも、樹齢を重ねた梅の木が1本。
されど、わが家の場合は「梅花より梅の実」で、老木につき往時の収量には及ばないものの、毎年5㎏ほどの実りをいただく。
日々の食生活を支える梅干し作りに貢献してくれるので、花が咲くころから折に触れ「頑張って」と声を掛けて応援。
梅雨入り前後には梅の実の成長が目に見えてくるので、今から梅干し作りの日程と作業手順があれこれ浮かぶことも。
毎年のことながら、準備期間を楽観的に過ごし、作業の進め方がタイトになるのは、これはもう「もって生まれた性分」ゆえと…。
<収穫から生漬け>
梅干し作りといえば、一般的に「完熟して黄色味を帯びてきた梅」を優しく丁寧に漬け込み、数カ月かけて酸味は軽めに、甘味(砂糖やハチミツなどの活用で)ベースで仕上げ、お茶請けなどに美味しくいただくのがポピュラーらしい。
そんな流行系にシフトせず、わが家では伝統的な「自然に醸し出される酸っぱさ」と「赤紫蘇の葉からの深い色合い」が基本。
実りのピークを見極め、完熟前の「青梅」の収穫から作業開始。明るい緑の梅の実は、収穫時には「コンコン」と音がするほど固めであるものの、漬け上がりには身くずれしにくく、まさに「梅干し」のよい仕上がりがイメージできる手触り。
収穫した梅の実を、文字どおり手塩にかけて漬け込み、2年ほどの周期で食用に。
毎日の食卓&弁当の友に、梅干しは必要にして不可欠で、梅干し本来の「酸っぱさ」が健康管理の大切なサポーター。
こうした梅干し作り、わが家の手順は至ってシンプル。
収穫した青梅を桶で水洗いし、水気をきって計量。
このとき、梅の実にくっついている小さい枝など、食べられない部分をしっかり取り除く。
キズや虫食いのチェックも、忘れてはいけないポイント。
くれぐれも、実の中に虫が残っているなど、あり得ないことがおきないように。
洗った梅を塩で漬ける。塩の量は「梅10㎏に塩2㎏」が目安。
桶は、少し大きめのほうがよい。塩の効果で梅の実から水が出てくるが、梅の量によっては桶からあふれることもあるので、気をつけたいところ。
全体の容積は同じはずなのに、なぜ桶からあふれてしまうのか、不思議で面白いな~と。
【青梅の水洗い】
<天日干しから本漬け>
2週間ほど生漬け(きづけ)の日々を過ごし、赤紫蘇の葉を全体に混ぜ込む。
赤紫蘇の葉は梅干し用に加工されたパッケージものも市販されてはいるが、摘み取りや洗浄に手間がかかったとしても、地元産の生ものを使うのがわが家のスタイル。
鮮やかな梅干しらしい「赤紫」の発色が良くなることに加え、手間の分だけうまみ(酸っぱいおいしさ)が増すとの期待も込めて、手が赤く色づく作業が毎年の定番。混ぜ込む赤紫蘇の葉の分量の20~30%程度の塩を加えて桶を密閉し、さらに2週間ほど漬け込む。
【紫蘇の葉 摘みとり】
【紫蘇の葉 もみ洗い】
土用の時期、好天が続くとの予報を待って、天日干しを2~3日。
天日干しは、文字どおり「太陽に当てて、しわしわになるまで梅の水分を除く」作業。竹を編んだ平かごに新聞紙を広げ、その上にペーパータオルを敷き、梅を並べていく。
ペーパータオルは、下部側の水分を吸収してくれるとともに、白い色のおかげで太陽の光が反射し、まんべんなく梅を干すことが可能に。太陽の恵みを受けながら、赤紫蘇の香りをまとって水気が抜けた梅の姿は、まさしくわが家オリジナルの「梅干し」らしさ。
【土用干し】

DSC_0012
天日干しを終えた梅を漬物用ビニール袋に移し、天日干し前の漬樽の中身(赤紫蘇の葉や梅酢など)を混ぜる。熟成させる桶に、あらかじめ大きめの漬物用ビニール袋をセット。
その中に、天日干し後の梅などを入れた、前述の漬物用ビニール袋を入れる。梅を入れた漬物用ビニール袋は、中に落し蓋(ラップでも可)をし、焼酎を回しかけて密封。桶に広げた大きめの漬物用ビニール袋の中に納めたら、桶には外蓋をカチッとはめ込み。
さらに、外蓋が外れないように上からビニール袋で覆い、全体をPロープでしっかり固定して作業完了。待つこと2年ほど、適度な塩気とキツメの酸味が良く効いた、わが家ならではの「梅干し」のできあがり。
手塩にかけた「梅干し」を食するたび、まさに「塩梅」の意味に思いを馳せつついただいている。