登米に暮らす
実りの秋、季節のうつりかわりを思いつつ~登米地方の手仕事~自産自消を楽しむTome暮らし⑦~
連載シリーズ、Studio.K特派員からの寄稿第7弾!
<猛暑を乗り越えて迎えた「秋」>
記録的というよりも、猛暑の記録づくめだった2025年の長く厳しい夏。
立秋から秋彼岸を過ぎ、10月に入り、気温もいくぶん穏やかになってきたと感じられる昨今。
夏野菜を畑から片付け始めたり、夕暮れが早くなったり、星座の配置が秋めいてきたりと、時間は確実に夏から秋へと流れて。
【「仲秋の名月 2024年9月撮影」~猛暑が和らぐにつれて、カメラと外に出たくなる~】
1年という時間枠の中で「夏」を意識してしまう期間が長く感じられ、相対的に「春」と「秋」が近年は短く思えてならない状況とはいえ、自然の営みは確実に四季を刻みつつ歩んでいくもの。
畑の恵みを日々の生活の中でいただいている身なれば、ほんのちょっとした出来事の端々に、時の動きに思い至るシーンが「あれっ?」とか「あっ!」という言葉とともに意識に上ることに。
【稲刈りを待つ田園を彩る残照~登米地方の秋らしい夕景をキャッチ~】
<自産自消でいただく秋>
「ほくほく」とか「ねっとり」などと口当たりが形容されるカボチャやサツマイモ、噛むほどに香りと味をいただける新米など、夏の野菜や果実のパンチの効いた食味とはまた別の「しみじみとした口福感」。
秋野菜だけでなく、この時期、イチジクや柿といった畑にある木々からの秋の恵みも、タイミングを外すことなく「季節の味」としていただきたいところ。
<猛暑に負けなかった野菜たちも>
初夏から続いた高温・少雨が続く中、いくつもの野菜苗がしおれるように敗れ去った2025年ではあるものの、ナスやピーマン、オクラなどは、頑張って恵みを届けてくれた。
この夏、巷では「野菜づくりに苦戦」との声もよく耳にする。まだまだ若葉マークが外れた程度の生産者ながら、今シーズンは偶然にも食べきれないほどの収穫に。子どもたちにも折に触れて採りたて野菜を提供でき、親の心境としては「ありがたい」ところ。
特に、奥さんの実家の畑で、広さを活かして育ててきたカボチャは、2本しか苗を植えていないものの、どんどん伸びていき、40個ほどの収量に。早いタイミングで「もう食べられるくらい育ってきた?」ようにみえた5個ほどは、高温と少雨の影響からか、でこぼこな外観や十分に育ちきっていない手触りのままでツルから切り取るしかなく、乾燥させている間も変質が進んだためにやむなく廃棄。
しかしながら、8月半ば以降の実りは、食感に個体差はあるものの、お裾分けした皆さんに驚かれるサイズ感で手触りも良好。外観から状態を予測してツルから収穫し、ときどき「コンコン」という音を確認しながら日陰で乾燥させ、食べ飽きないように「甘煮、野菜カレー、天ぷら、シチュー、マッシュサラダ」など、順番にメニューを工夫していただいている。これから試すつもりの小豆と合わせての煮物(世間には「いとこ煮」の呼び名もあるよう)などは、深まる秋の季節感にマッチしつつ「味わいや舌ざわり」を楽しむ調理法かと。
まあ、奥さんと二人、「保存しながら食べきれる個数はいくつまでだろう」と話し合いつつ完食を目指しているが、前述のようにお付き合いいただいている皆さんにもお裾分け(押しつけとの説もあるが…)しながら、消費に協力をいただいている。食べ方は人それぞれではあるものの、「天ぷらがうまかった」などのお声掛けをいただくと、モチベーションのアップにもつながるというもの。
【今シーズンのかぼちゃ~数にも大きさにも驚き、そして味も◎~】
<スズメバチに全クリされないように>
果樹というよりは、庭木の方がマッチしていそうなイチジクや柿。
どちらも、日々の作業の中で色づきを確かめつつ収穫の順番を楽しみにしていたところ、特にイチジクはどこからか飛来したスズメバチに、熟した先からいただかれてしまう展開に…。
いくつか先行されている状況を眺めていたら、スズメバチにいただかれる前、少し早めのタイミングで収穫してしまうことに思い至る。偵察に飛び回るスズメバチに気づかれないよう、気配を消して身を守りつつ、ちょっと早いかなという段階で採り込み、自宅の冷蔵庫で2日ほど休ませてから調理。
今シーズンはザラメと濃縮レモン果汁で煮込む方法を選択、ちょっと後味の良いイチジクの甘煮をいただいている。
【奥さんの実家の畑のイチジク~スズメバチの横取り攻撃に抵抗~】
<柿の思い出>
一方、実りが進むにつれて、色づくオレンジが秋を象徴するような柿。
柿の木や実は、少年期の記憶にダイレクトにつながる。私の実家にあった柿の木はだいぶ小ぶりではあったものの、家族が「この柿は半木ざわし」と呼んでいたように、実りながら渋が抜けて甘みを帯びてくるような種類。
もちろん、すっかり渋が抜けて甘くなるわけでなく、パリッとした食感とほんのりとした甘さが特徴。
それでも、気のきいた「オヤツ」など無かった時代、毎年、柿の実が色づいて食べごろになると、庭先の柿の木に登っては食べることが日課のような日々。
秋を迎えるごとに、記憶の底から蘇る。柿の木は滑りやすく折れやすいので、大人より体重が軽い子どもでも、アプローチは難しい。
木肌が乾燥しているのを確かめながら登っていたはずで、小柄だった少年期が懐かしく思い出される。
なお、一般的な「渋柿」でも、先人の知恵で渋を抜き、甘味を深めつつ美味しくいただける。
渋抜きの代表は、焼酎で漬け込む焼酎抜きと干し柿になるが、幼少期の私は焼酎抜きが苦手(これは、歳を重ねた現在でも)で、干し柿にしても、十分に水分が抜け、すっかりしぼんで硬くなった(干からびたとは言わない)状態が好み。
【奥さん実家の畑の柿~オレンジ色の深まりをみながら収穫して干し柿に~】
<柿の思い出>
今年も、奥さんの実家の畑の傍らで色づく柿を眺めては、「干し柿にチャレンジかな~」と思いを巡らす。皮むきの過程では、柿渋の影響で指先だけでなく手のひら全体が黒ずんでしまうことになり、ちょっと億劫で…。
なお、干し柿は、家庭によっては大根や人参のスライスと合わせる「柿ナマス」などとしても楽しまれているようで、料亭の先付や箸休めに並ぶようなメニューを手軽に食されている方も多い。
これも、ふだんから自産自消の食を嗜まれている好例かと。
<先人の知恵と世の中の創意工夫が支え>
畑を耕しては、適期の種まきや苗の植え付けが遅れていたり、適期収獲の意識が足りずに実りを保存できなかったりと、「育てたい」とか「食べてみたい」に左右されながらの野菜作り。
今年は、瓜がほとんど全滅に近く、収穫したタマネギは3割ほど腐食の憂き目に。一方で、去年の実から得たオクラの種の残りを8月に蒔いてみたら、発芽率は「ほぼ10割」でまだまだ実りは続きそうということにも…。
【8月に種まきした「角オクラ」~9月の適度な降雨のおかげか、まだまだ実りも順調~】
種や苗を市場に提供されている皆さんは、このところ一般化している「温暖化、長期にわたる高温、ゲリラ豪雨、天候不順」など、さまざまな気象条件にも適応しつつ育ち実る種類を研究の上、毎年の気象条件を予測しながら地域にマッチした種や苗を出荷されていることでしょう。
知識や技術を持ち合わせないまま、作りたい気持ち任せで自産自消を続けている身としては、そうした創意工夫や研究の積み重ねに、ただただ敬意を表するのみ。
種づくりや苗づくりに精進されている皆さんに感謝しつつ、冬から春に向けての野菜づくりや年末年始のスケジュールを思う、深まりへと向かう秋の日。
【2m超に育った「まるオクラ」~伸び続けるのも実り続けるのも温暖化の影響?~】